▼久しぶりにビワを食べた。球体とも卵形ともつかぬ外見に、枇杷(びわ)色と呼ぶしかない果肉。ほのかな甘みと酸味が懐かしい。中国原産というが、この実が醸す曖昧(あいまい)さは和のものだ。フルーツより水菓子の名が似合う。
好久没有吃枇杷了。今日得嘗,(只見它)外型長得既非圓形、亦非卵形,加以只能稱之為枇杷色的果肉。(入口後)略微帶些酸甜味道,令人回味無窮。雖然眾人皆言其原本產自中國,但該果實中所醞釀出的一份曖昧感,卻有一種日本式的味道。與其將它歸為fruit(英語:水果),不如稱作「水菓子」(日語:水果)更為妥當。
▼今年、種のないビワが初めて店頭に並んだ。千葉県の農林総合研究センターが10年をかけて生んだ新品種「希房(きぼう)」。あるべきものがない珍しさに、1個5千円の値もついた。
今年,千葉縣農林綜合研究中心歷時十年培育出來的新品種—「希房」首次上市,這種無籽枇杷因實屬難得一見,而售價高達每個五千日元。
▼〈枇杷すすりすぐに大きな種と会ふ〉小内春邑子。その種は、なるほど、実に比して不当に立派である。種や皮を除くと、食べられる部分は重さで7割弱。種が消え、これが9割になったそうだ。もともと微妙な味に大差はなく、出荷が増えれば相場も落ち着くだろう。
小內春邑子曾云:「小口吮枇杷,即遇大大籽」。與果實相比,枇杷的籽兒確實過於「氣宇軒昂」了。倘若除去籽和皮,可供食用部分的重量只占不到70%。據說,變為無籽後,其重量為原來的90%。在味道上,(新品種)與原有的微甜微酸並無大的差異,因此估計隨着產量的增加,價格也會降下來。
▼こうした「破格」の最たるものは夕張メロンだ。過日の初競りにて(にて=で)、2個250万円の史上最高値が出た。今年も夕張再建への激励だという。ひとたびブランドになれば話題づくりも思うがままだ。
諸如此類「天價」,此前當屬夕張(地名:位於北海道)甜瓜。在不久前舉行的首場「夕張甜瓜」擂臺賽上,出現了有史以來的高價—兩個250萬日元。聽說今年仍有人寄希望于夕張再展雄風。東西一旦做成了品牌,就要有人來品頭論足一番了,這也是常有的事兒。
▼星新一の短編「リオン」では、動物学者がリスとライオンをかけ合わせた新生物をつくる。かわいいが、不審者には勇猛に立ち向かう夢の動物。それを見た友人の植物学者は、ブドウとメロンを交配し、大きな実が房をなす夢の果物に挑む。苗は育ち、ブドウ大の実をメロンのように少しだけつけた。
在星新一的短篇小說《松獅》中,動物學家讓松鼠與獅子雜交,製造出了一個新物種。這種帶有夢幻色彩的動物外型可愛,但面對可疑分子時卻能勇往直前。我的朋友是位植物學家,他看了小說後將葡萄與甜瓜嫁接到一起,向碩大的果實結成串的理想中的水果發起了挑戰。小苗長高了,上面接着的果實和葡萄大小相似,只是稍微有些像甜瓜。
▼「ブロン」ほどでなくとも、見込み違いは品種改良につき物だ。それでも、より甘く、もっと大きく、さらに食べやすくをめざして、探究心と商魂の並走は続く。自給ままならぬ日本の食料事情は、かくして頂ばかりが伸びてゆく。
它還稱不上是「葡瓜」,只能說是沒有達到預期效果的改良品種罷了。即便如此,出於鑽研精神和經濟效益的雙重考慮,人們仍在為結出更大、更甜、更易於食用的品種而努力着。如此說來,尚不能做到糧食自足的日本,正食品上卻快要登峰造極了。
解說:
種子(たね)なしビワの新品種「希房(きぼう)」: ビワは、消費者にとって種子(たね)の存在が目立つ代表的な果物です。そこで農業総合研究センター暖地園芸研究所では、ブドウなどの果物に使われている三倍体利用技術を応用して、「種子なしビワ」の作出技術を平成6年に開発しました。 この作出技術の開発と並行して、品質の優れた「種子なしビワ」専用品種の開発を目指し、本県の代表的な品種である「田中」を母親に、•長崎早生(わせ)•を父親としてかけ合わせ、三倍体品種の育成を平成3年に始めました。 その後、特性調査を続け、200系統の中から優良な系統を選抜し、品種名を「希房」として、平成15年9月に農林水産省に品種登録の出願をしました。 これが、正式に品種登録されると、世界初の種子なしビワの品種となります。
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